松熊 修吾 MATSUKUMA, Shugo

空石積による水路改修と見えてきた地元の魅力

松熊修吾(西日本科学技術研究所

 高南台地の稲作を支え続けてきた「越行水路」。四万十町が行った改修事業では、その一部の区間が空石積(コンクリートを使わない石積)で補修されました。草刈りや泥上げの手間を省くことを最優先してコンクリートで固めてしまえば、この水路の貴重な外観と生態系が損なわれてしまう。そこで受益者の方々と話し合いを重ね、水路管理の負担軽減と、外観、生態系の保全をバランス良く実現できる補修方法を丹念に検討しました。話し合いでは様々なことが語られ、水路で魚を捕る楽しみが今も続いていること、空石積護岸の知識が豊富なこと、四万十に培われた生態学的眼差しが水路に向けられていることがわかりました。また、水路管理を受益者協同で行う田役が共同体の維持に役立っている様子もうかがえました。生物に優しいけれど水路管理に多少手間がかかる空石積は、水路との、また受益者相互の豊かな関係性という地元の魅力の存続に役割を担うものと期待します。

松熊 修吾 MATSUKUMA, Shugo

西日本科学技術研究所 土木研究室 研究員

福岡県出身。土木技術者。公園緑地の設計を経験した後、「近自然工法」を学びたくなり、11年前に高知へ。近年、お仕事を通じて四万十と関わりを持てるようになりました。微力ながら、自然と人がイキイキできる景観づくりをお手伝いしています。