山下慎吾 YAMASHITA, Shingo

小さな自然再生:木枠土嚢魚道による効果の整理,竹蛇籠工法への挑戦

山下慎吾ほか(魚山研ほか)

 高知県土佐清水市を流れる三崎川は,生物相の豊かな海域に流入する河川であるが,堰堤による分断化が著しく,河口から遡上する水生生物にとって連続性に乏しい。そこで,生態ネットワーク回復に向けて「研究会はたのおと」が市民主導型の小さな自然再生事業を進めている。春季の遡上を促すため,2014年度は木枠土嚢工法による魚道を第一堰堤に期間設置し,水生生物モニタリング調査を実施した。その結果,魚類やエビ・カニ類が魚道を遡上していることが確認され,2015年6月に予定どおり構造物の撤去を完了した。一方で,もし出水等により木枠土嚢魚道が流出した場合,重量のある間伐材が問題となる危険性があること,ポリエチレン製土嚢袋がゴミとなってしまうという短所があった。さらに,三崎川の水生生物相を考慮し,遊泳魚類よりも小型の底生魚類やエビ・カニ類にとって遡上しやすい構造とするという課題があった。木枠土嚢魚道の短所と課題に対応するため,今年度は新たに竹蛇籠を活用した魚道の設置に挑戦した。通常,竹蛇籠の材料はマダケが用いられるが,我々は放棄竹林で問題となっているモウソウチクを使えるよう試行錯誤をおこなった。マダケでは幅50mmとされていたが,モウソウチクは肉厚であるため幅35mmに揃えることが最適であることがわかった。また,輪状にした竹材を用いた編み方に改良することにより,魚道構造とするうえで,均一性が高くかつ圧縮に強い竹蛇籠となった。製作した竹蛇籠は,直径50cmと40cm,長さ3.0m, 2.3m, 1.8mの計30個である。完成した竹蛇籠を現地に運搬し,1-3段に俵状に積み,最大高さ1.4m,竹蛇籠部の長さ9.0mの魚道とした。詰物として,堰堤に堆積した石礫,葦簀,ツルヨシの根を組み合わせて適度に不透水性を持たせ,堰堤から越流する水を受けて竹蛇籠魚道の上部および内部に通水するよう工夫した。魚道設置は2016年1月末に無事完了した。