高知県にすむ2種の希少なドジョウ-ヒナイシドジョウとトサシマドジョウ-
高橋 弘明(西日本科学技術研究所)
高知県希少野生動植物保護条例による「希少野生動植物」に指定された2種のドジョウ、ヒナイシドジョウ、トサシマドジョウについて、最新の調査・研究事例を紹介する。ヒナイシドジョウ Cobitis shikokuensis はSuzawa(2006)により、高知県四万十川水系日野地川を模式産地とし、新種記載された。四国の固有種で、愛媛県と高知県の7水系だけに生息する。斑紋から3型に類型化されるが、水系ごとに異なる遺伝的特徴をもち、亜種レベル以上に分化した集団も存在する。2014年から行ってきた調査では新たな生息地が発見された反面、四万十川水系等、最近20年間で個体数が急激に減少した生息地も多い。トサシマドジョウ Cobitis sp. BIWAE type Dは新荘川~伊尾木川に至る土佐湾流入河川のみに分布する高知県固有のシマドジョウ属魚類である。四国に分布するもう一種のシマドジョウ種群であるオオシマドジョウとは、体高、尾柄高、胸鰭長、尾鰭基部の斑紋ならびに骨質盤の形状によって識別できる。今回の調査でトサシマドジョウの生息が確認された地点は7水系11地点であり、過去に本種が生息したと考えられる14水系から半数に減少した。このように、条令指定種であるにも関わらず、両種とも生息状況の悪化は明白であり、保全に向けて一層の努力が必要である。
高橋 弘明 TAKAHASHI, Hiroaki
西日本科学技術研究所 生物研究室長
1969年2月生れ。水瓶座。47歳。高知市在住。自他共に認める生物ヲタクで、ドジョウとハゼを求めて日本各地の川に出没するが、近年は四万十川流域で目撃されることが多い。