山に火を放つ中学生の話
白川 勝信(芸北高原の自然館)
雲月山の山焼きは,昭和30年代までは,枯れ草を燃やして若草の芽生えを促すために行われていました.農耕に牛馬が使われなくなってからは,草が必要無くなり,山焼きも途絶えていました.そこで,消えゆく草原景観や草原の草花を保護するために,地域住民,NPO,消防団,ボランティアなどが協同して,2005年から再開されました.当初から,地元の小学生は,ボランティアと一緒に作業を手伝っており,2015年からは中学生が火を放つ役割を担っています.芸北では,地域の山にある広葉樹を薪として流通させる「芸北せどやま再生事業」が進められ,雇用も生まれました.小学校でせどやま事業を学習した児童は,中学校では茅(ススキ)を流通させる事業を始めました.里山の利用を体感した子ども達が,今度は「火入れ」という資源管理を体験しています.その姿は地域住民やボランティアなど大人の目に,微笑ましく,そして頼もしく映っているようです.
白川 勝信 SHIRAKAWA, Katsunobu, Ph.D.
芸北高原の自然館 学芸員 博士(学術)
広島県北広島町が運営するビジターセンターで働く学芸員。湿原、半自然草原、里山林など、身近な生態系の記録と保全をテーマに博物館活動を展開している。人と自然が生きていくための「新たな仕組み」を日々模索中。