幡多地域から始める新しい蘭の開発
石田 隆博(石田蘭園)
蘭は、地球上で最も進化した植物であり、最も新しい植物であると言われる。自然界に2万5千種程の蘭があると考えられていて、農業や食品として活用されているのは、その内の約1割未満であろう。寒蘭はその一つであり、東洋蘭という1ジャンルを築いた代表的な蘭である。
幡多地域は、以前は土佐寒蘭の産地として知られていたが、昭和20年代~30年代に起きた東洋蘭ブームによる乱獲によって、その貴重な生態系が破壊され、今や山で寒蘭が咲いている光景をほとんど見ることができない。私は、寒蘭の恩恵を得て、品種改良をした蘭花を開発し、幡多地域ならではの蘭ビジネスを探求している。
開発した蘭を通して、改めて幡多地域の自然に目を向け直し、貴重なこの寒蘭の遺伝資源を保護する活動に発展させていきたい。又、保護活動をしながら、幡多地域の自然環境を調査し直し、「なぜ、土佐寒蘭が幡多地域で繁殖したのか」を追いかけたい。そして、幡多地域で起こった蘭の史実についても紐解き、記録していきたい。
石田 隆博 ISHIDA, Takahiro
石田蘭園 代表
1983年宿毛生まれ宿毛育ち。土佐寒蘭のメッカ宿毛で、洋蘭シンビジュームと東洋蘭の交雑種「和蘭」を新ジャンルとして世に送り出している。園芸品種として出回る自分の蘭を通して、その背景にある自然に目を向け、自然の良さや大切さを考えるきっかけにしたいと日々奮闘中。